障がい福祉・制度動向

2027年度障害福祉報酬改定の論点案と地域連携――障がい福祉事業を地方展開する法人が確定前に現地で確認したいこと

監修:株式会社メディケアプロモーション|最終更新日:2026年9月22日

2027年度障害福祉報酬改定の「主な論点(案)」が示された

厚生労働省の障害福祉報酬改定検討チームは、2026年8月27日の第62回で、「令和9年度障害福祉報酬改定に向けた主な論点(案)」(資料2、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部、こども家庭庁支援局障害児支援課)を示した。資料によれば、論点は次の4つに整理されている。

  • 持続可能なサービス提供体制の確保
  • 希望する地域等での生活の支援や多様なニーズへの対応
  • サービスの質の確保・向上と制度の持続可能性の確保
  • 地域差や人口減少への対応等

資料には「上記の論点は現時点のものであり、今後議論を進めていく中で変更することがあり得る」と明記されている。以下は、改定の内容として確定したものではなく、検討の出発点として示された論点である。

福祉新聞の記事によれば、検討チームは6月から計53団体に順次ヒアリングを行い、8月に論点を整理した後、9月以降に各サービスの報酬について議論し、12月に基本的な考え方を整理、2027年2月に報酬改定案をまとめる予定とされている。厚生労働省の開催案内によれば、第63回は2026年9月24日に「令和9年度障害福祉報酬改定に向けて(訪問系サービス)」を議題として開かれる。

資料が示す背景――費用の伸びと「質」への問題意識

資料の「はじめに」によれば、障害福祉サービス等の利用者は約170万人、国の予算額は約2兆3千億円で、障害者自立支援法の施行時と比べて約4.5倍になっている。一方で、2024年度(令和6年度)改定(改定率+1.12%)の後、総費用額は+12.1%(一人あたり総費用額+6.0%、利用者数+5.8%)の伸びとなり、引き続き人材確保が課題で、サービスの質の低下も懸念される状況にあるとされる。このため2026年度(令和8年度)には臨時の報酬改定が実施された。

「基本的な考え方」では、前回改定以降、障害者本位ではないサービス提供が行われている事案が相次いで明らかになったこと、「特段の知識や経験は不要」「利益をあげることができる」として新規の参入・事業実施等を働きかける例も見られることが指摘されている。そのうえで、必要な支援を行っていない事業者ではなく、質の高い支援の提供にしっかりと資源が用いられるようにする見直しが、制度の持続可能性の観点からも必要不可欠であり、事業者指定や指導監査等の取組に加え、報酬上もサービスの質の確保・向上に向けた取組を徹底し、メリハリのきいた報酬体系とするなど総合的な取組が必要ではないか、とされている。

地域連携に関わる論点を拾う

4つの論点のうち、地域の関係機関との連携に関わる記述を、資料から拾うと次のようになる。

  • 地域移行と地域生活の支援:入所施設や病院からの地域移行を進め、障害者がどの地域においても安心して地域生活を送れるよう、地域生活支援拠点等の整備の推進を図る方策を検討しつつ、各サービスの支援の質の確保を図る必要があるのではないか、とされている。
  • 相談支援:障害者が希望する生活を実現するために重要な役割を担う相談支援について、「のぞまないセルフプランの解消」も含め、質の確保や提供体制の整備を図る方策の検討が必要ではないか、とされている。
  • 医療をはじめとした関係機関との連携:強度行動障害や医療的ケアが必要な児者など多様なニーズに応じた支援体制を構築するうえで、保健・医療や福祉、その他の施策との連携をさらに推進する方策の検討が必要ではないか、とされている。精神障害者については「精神障害にも対応した地域包括ケアシステム」の構築をさらに推進する必要があるのではないか、とされている。
  • 事業者の質の確保:営利法人を中心に事業所数や利用者数が大幅に増加しているサービスが見られる中、「共同生活援助における運営や支援に関するガイドライン」等の内容も踏まえた更なる対応や、管理者等の要件や研修など支援の質の向上を図る対応の検討が挙げられている。
  • サービス提供の実態に応じた評価:サービス提供にかかる移動時間や定員規模など、実態に応じた報酬のあり方を検討する必要があるのではないか、サービスの提供にあたって中立性・公正性の確保を図ることも必要ではないか、とされている。
  • 中山間・人口減少地域:障害福祉分野においても中山間・人口減少地域におけるサービス提供体制の維持・確保は課題であり、共生型サービスなどの効果的な活用も含め、地域の実情に応じたサービスの維持・確保を図る方策を検討すべきではないか、とされている。社会福祉法等改正法により新設された、地域の実情に応じた配置基準や包括的な報酬の仕組みが導入可能となるサービス類型について、その基準や報酬の仕組みの検討が必要ではないか、ともされている。

障がい福祉事業を地方展開する法人にとっての意味

論点案を通して読むと、報酬上の個々の項目とは別に、一つの方向が見える。新規に参入する事業者に対して、地域と制度の側が「質」を見る目を強めている、ということである。資料は、新規参入を「利益をあげることができる」と働きかける例に触れたうえで、質の高い支援に資源が用いられるようにする見直しを掲げている。複数の地域に新しく事業所を開設する法人は、本部にどれだけ運営実績があっても、進出先の地域から見れば「新しく入ってきた事業者」である。相談支援専門員や医療機関、自治体の窓口に、自法人がどのような支援をどのような体制で行うのかを、正確に、繰り返し伝えることの重みは、これまで以上に増すと考えられる。

また、相談支援の質や提供体制、地域生活支援拠点、精神障害にも対応した地域包括ケアシステム、中山間・人口減少地域での体制維持は、いずれも「地域の側の体制」に関わる論点である。改定の結果として報酬や基準がどうなるにせよ、進出先の地域で、誰がサービス利用の入口を担い、どの機関が連携の要になっているのかは、地域ごとに異なる。この違いは、改定の内容にかかわらず、事業の立ち上がりを左右しうる。

本部だけでは把握しにくいこと

本部が論点案を読み解く作業と、進出予定地域の実情を見極める作業は、別のものである。次のような情報は、現地の関係者と接点を持たなければ、資料からは分かりにくい。

  • その地域で計画相談を担う相談支援事業所がどの程度あり、どのような体制で動いているか。セルフプランの多い地域なのか、相談支援専門員が利用計画の作成に深く関わる地域なのか
  • 基幹相談支援センター、自治体の障がい福祉窓口、病院の地域医療連携室(PSW・MSW)のうち、実際に連携の要となっているのはどこか
  • 地域生活支援拠点等や、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムに関する協議の場が、その地域でどのように動いているか
  • 新規参入の事業者に対して、地域の関係機関がどのような目を向けているか。何を確認したいと考えているか
  • 中山間地域では、訪問や送迎の移動にどの程度の時間を見込む必要があるか
論点案に「新規の参入・事業実施等を働きかける例」への問題意識が書き込まれたことは、地方に進出する法人にとって、「地域に正確な情報を届け、選択肢として知ってもらう」活動の意味が変わりつつあることを示していると考えられる。求められるのは、利用者を集めることではなく、地域の支援者が事業所の支援内容と体制を正しく理解できる状態をつくることである。

改定が確定する前に、現地で確認できること

2027年度の改定内容は、まだ確定していない。9月以降、サービスごとの議論が続き、12月に基本的な考え方が整理される予定である。確定を待つ間にも、特定の報酬項目に依存しない、地域の状況の確認は進められる。

  • 進出予定地域で、サービス利用の入口になっている機関(相談支援事業所、基幹相談支援センター、自治体窓口、医療機関)を把握する
  • 自法人の支援内容、受入対象、支援体制、医療との連携について、関係機関に正確に伝えられる案内資料を整える
  • 地域の関係機関が新規参入の事業者に対して確認したいと考えている事項を、現地で聞き取る
  • 中山間・人口減少地域では、移動や人員配置に関する地域特有の制約がないかを確認する

進出前に確認したい項目は、チェックリストにまとめている。なお、障がい者グループホーム(共同生活援助)では、利用者の紹介の対価として利益を供与することが制度上問題とされており、地域への情報提供と利用者のあっせんは区別して考える必要がある。この点の整理は障がい福祉事業の地方展開・新規開設時の地域連携営業BPOを参照されたい。

地域連携営業BPOが担える部分

THRIVEは、こうした地域での接点づくりを、クライアントとの打ち合わせで作成した営業設計に基づき、現地で実行する地域連携営業BPOである。障がい福祉分野では、病院の地域医療連携室(PSW・MSW)、計画相談支援を行う相談支援事業所、基幹相談支援センター、自治体の障がい福祉窓口などを訪問し、クライアントの事業所の新規開設、支援方針、受入対象、支援体制、医療連携などの情報を、クライアントのパンフレットや案内資料を用いて届けるとともに、訪問先の反応や地域の状況を記録し、本部へ共有する。利用者を探して紹介したり、入居希望者を事業所へあっせんしたりする業務ではなく、相談支援専門員等へ紹介料を支払うこともない。

請け負うのは地域連携営業の部分だけで、資金調達、許認可・各種申請、物件探し、人材の採用・紹介などは対象外である。開設当初の地域連携がひと段落し、本部が現地から離れたあとも、営業体制を維持する長期的なサポートが可能である(「THRIVEの使い方」)。「地域連携営業BPO」の意味は「地域連携営業BPOとは」を、地域での認知の進み具合を月次で追跡する独自指標については「RPI(地域浸透指数)とは」を参照されたい。介護報酬改定の論点については、2027年度介護報酬改定の論点と地域連携で整理している。

地方展開の、次の一歩を。

開設予定地域や拠点数に合わせて、地域連携営業の実働体制をご提案します。